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日銀、3月に続き追加利上げ決定 不動産ローンへの影響も

 日本銀行は31日の金融政策決定会合で追加利上げを決めた。利上げはマイナス金利政策を解除した3月会合以来。2025年度末までの長期国債買い入れの減額計画と同時に決定した。
 政策金利の無担保コール翌日物金利を、従来の0-0.1%程度から0.25%程度に引き上げた。政策金利は08年10-12月の0.3%前後以来の水準となる。7対2の賛成多数で決定し、中村豊明、野口旭の両審議委員が反対した。

植田総裁のタカ派的思考が鮮明に


 植田和男総裁は先月、7月会合までに得られるデータや情報次第では、減額計画と利上げの同時決定も「十分あり得る」との見解を表明。個人消費の弱さを理由に利上げに慎重な声もあったが、基調的な物価上昇率が日銀のシナリオ通りに推移する中で、金融政策の正常化を着実に進める姿勢を明確に示した。

 植田総裁は同日の記者会見で、足元の金利水準は非常に低いとした上で、「利上げは景気に大きなマイナスの影響を与えることはない」と述べた。景気や物価に中立的な中立金利に関しては、大幅な不確実性があるとの認識は変わっていないと説明。その上で、政策金利の到達点については、「今回で二度目の利上げの影響を見つつ、歩きながら考える」との意向を示した。

 次の利上げのタイミングが何カ月というパスは思い描いていないとしつつ、水準として0.5%を壁として意識するかとの質問には「特に意識していない」と発言。今回と同様に「経済・物価の情勢が私どもの見通しに沿って動いていけば、引き続き金利を上げていく考えだ」と述べ、今後も利上げを継続していく考えを改めて示した。

 利上げによる住宅ローン支払いへの影響については「確かに今回の利上げによって、短期プライムレートが場合によっては少し動いて、変動金利型住宅ローン等の金利に跳ねることも考えられる」と述べ、その点はデメリットであるとしながらも全体的に見れば利上げのメリットの方が大きいとの考えを示した。

 第一生命経済研究所の首席エコノミストは、今回の決定で「日銀は基調的なインフレを重視していることが確認された」と指摘。景気への懸念で利上げに慎重な「ビハインド・ザ・カーブ」の姿勢から、先回りして政策を進める「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」へ確実に変わっているとし、「日銀はレジームチェンジをしてきている」との見方を示した。

 日銀は利上げの理由を、日本の経済・物価が見通しにおおむね沿って推移している状況を踏まえ、2%物価安定目標の持続的・安定的な実現の観点から「金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した」と説明した。実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されると指摘。経済・物価見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整していく方針を示した。

 植田総裁は政策変更の主な理由は「経済・物価データがオントラックであったということ」と述べるとともに、「足元の円安が物価に上振れリスクを発生させていることもあった」と説明した。

粛々と進められるテーパリング



 国債購入の減額計画では、これまでの月間6兆円程度を原則として四半期ごとに4000億円程度ずつ減額し、26年1-3月に3兆円程度まで圧縮する。長期金利が急激に上昇する場合は、機動的に買い入れ増額や指し値オペなどを実施する。必要なら決定会合で計画の見直しもあり得るとした。来年6月の会合で中間評価を行う。

 声明と同時に公表した新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、見通し期間の最終年度となる26年度の消費者物価(除く生鮮食品)の予想が前年比1.9%上昇と目標の2%付近を維持。消費者物価の基調的な上昇率が見通し期間の後半に2%目標とおおむね整合的な水準で推移するとのシナリオも変わらなかった。